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楕円積分と楕円関数

楕円積分や楕円関数を使うときは,特殊関数の場合以上に引数の指定には注意を要する.これらの関数の記述や使い方に関しては,相違した規約がしばしば使われる.その多くは,引数の呼び方において違いがあったり,引数と引数の間に入れる区切り記号としてコンマ以外の記号が使われたりする.
• 振幅 PhiMathematica で用いられる,ラジアンで指定)
• 引数 uMathematica で用いられる):Phi=am (u) で振幅に関連する
• デルタ振幅 CapitalDelta (Phi)
• 座標 xx=sin (Phi)
• 特性 n(第三種楕円積分において Mathematica で用いられる)
• パラメータ mMathematica で用いられる):I (PhiVerticalSeparatorm)のように垂直バー (VerticalSeparator)に続く
• 補パラメータ m1m1=1-m
• 母数 (Modulus) kI (Phi, k); m=k2 のようにコンマに続く
• モジュラ角 AlphaI (Phi\Alpha); m=sin2 (Alpha)のようにバックスラッシュ (\ )に続く
• ノーム qTheta 関数でコンマに続く; q=exp[-Pi K (1-m)/K{m)]=exp (i Pi OmegaPrime/Omega)
• 不変数 g2g3Mathematica で用いられる)
• 半周期 OmegaOmegaPrimeg2=60w-4g3=140w-6,ここで w=2rOmega+2sOmegaPrime
• 周期の比 TauTau=OmegaPrime/Omega
• 判別式 CapitalDelta
• 曲線のパラメータ abMathematica で用いられる)
• 座標 yMathematica で用いられる):y2=x3+ax2+b x と関連している

楕円積分と楕円関数の共通的な引数に関する規約

JacobiAmplitude[u,m]引数 u とパラメータ m に対応した振幅Phi を返す
EllipticNomeQ[m]パラメータ m に対応したノーム q を返す
InverseEllipticNomeQ[q]ノーム q に対応したパラメータ m を返す
WeierstrassInvariants[{Omega,OmegaPrime}]
半周期{Omega, OmegaPrime}に対応した不変数{g2, g3}を返す
WeierstrassHalfPeriods[{g2,g3}]
不変数{g2, g3}に対応した半周期{Omega, OmegaPrime}を返す

異なった引数規約の間における変換

楕円積分

EllipticK[m]第一種完全楕円積分 K (m)
EllipticF[Phi,m]第一種楕円積分 F (PhiVerticalSeparatorm)
EllipticE[m]第二種完全楕円積分 E (m)
EllipticE[Phi,m]第二種楕円積分 E (PhiVerticalSeparatorm)
EllipticPi[n,m]第三種完全楕円積分 CapitalPi (nVerticalSeparatorm)
EllipticPi[n,Phi,m]第三種楕円積分 CapitalPi (n;PhiVerticalSeparatorm)
JacobiZeta[Phi,m]ヤコビのゼータ関数 Z (PhiVerticalSeparatorm)

楕円積分

R を有理関数,y2x の三次または四次の多項式とするとき,IntegralR (x, y)DifferentialDx で表される積分を楕円積分と呼ぶ.あらゆる楕円積分は,3種類あるルジャンドル・ヤコビの楕円積分で表すことができる.
第一種楕円積分EllipticF[Phi, m]は,-Pi/2<Phi<Pi/2において で与えられる.この楕円積分は,単振子の運動状態を表した方程式の解法に使われる.また,第一種の不完全楕円積分としても知られる.
文献によっては,Mathematica で使われる引数の順序とは逆の順序で引数が与えられることがあるので注意する.
第一種完全楕円積分EllipticK[m]は,で与えられる.ここで,K は第一種完全楕円積分を表し,F は不完全楕円積分を表すことに注目されたい.実際の用途では,m が省略れ,K (m) は単に K と記述されることがよくある.補第一種完全楕円積分 KPrime (m)は,K (1-m)で与えられる.この積分はしばしば KPrime とも表記される.KiKPrime は,対応するヤコビの楕円積分(「楕円関数」を参照)の「実部」と「虚部」の各々からなる4分の1周期を与える.
第二種楕円積分EllipticE[Phi, m] は,-Pi/2<Phi<Pi/2の範囲において, で与えられる.
第二種完全楕円積分EllipticE[m]は,で与えられ,E とも表記される.この補形は EPrime (m)=E (1-m)となる.
ヤコビのゼータ関数JacobiZeta[Phi, m]は,Z (PhiVerticalSeparatorm)=E (PhiVerticalSeparatorm)-E (m)F (PhiVerticalSeparatorm)/K (m)で与えられる.
ヒューマン(Heuman)のラムダ関数は,で与えられる.
第三種楕円積分EllipticPi[n, Phi, m]は,で与えられる.
第三種完全楕円積分EllipticPi[n, m]は,で与えられる.
第二種完全楕円積分 E (m)をプロットする.
In[1]:=
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Out[1]=
Alpha=30EmptySmallCircleK (Alpha)を計算する.
In[2]:=
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Out[2]=
プロットすると,楕円積分が複素平面上で複雑な構造を持つことが分かる.
In[83]:=
Click for copyable input
Out[1]=

楕円関数

JacobiAmplitude[u,m]振幅関数 am (uVerticalSeparatorm)
JacobiSN[u,m], JacobiCN[u,m], etc.
ヤコビの楕円関数 sn (uVerticalSeparatorm)
InverseJacobiSN[v,m], InverseJacobiCN[v,m], etc.
逆ヤコビの楕円関数 sn-1 (vVerticalSeparatorm)
EllipticTheta[a,u,q]楕円シータ関数 CurlyThetaa (u, q) (a=1, ..., 4)
EllipticThetaPrime[a,u,q]楕円シータ導関数 (a=1, ..., 4)
SiegelTheta[Tau,s]シーゲルのシータ関数 CapitalTheta (Tau, s)
SiegelTheta[v,Tau,s]シーゲルのシータ関数 CapitalTheta[v] (Tau, s)
WeierstrassP[u,{g2,g3}]ワイエルシュトラスの楕円関数 WeierstrassP (u;g2, g3)
WeierstrassPPrime[u,{g2,g3}]
ワイエルシュトラスの楕円導関数 WeierstrassPPrime (u;g2, g3)
InverseWeierstrassP[p,{g2,g3}]
逆ワイエルシュトラスの楕円関数
WeierstrassSigma[u,{g2,g3}]ワイエルシュトラスのシグマ関数 Sigma (u;g2, g3)
WeierstrassZeta[u,{g2,g3}]ワイエルシュトラスのゼータ関数 Zeta (u;g2, g3)

楕円関数とこれに関連した関数

二次形式の平方根を含む有理関数は,逆三角関数を使って積分することができる.このため,三角関数をこれらの積分で得られる関数の逆として定義することもできる.
類推から,楕円関数は楕円積分で得られる関数の逆として定義することができる.
ヤコビの楕円関数の振幅JacobiAmplitude[u, m]は,第一種楕円積分の逆関数である.u=F (PhiVerticalSeparatorm)ならば,Phi=am (uVerticalSeparatorm)と書ける.ヤコビの楕円関数を用いるとき,しばしば m が省略され,am (uVerticalSeparatorm)am (u)と書かれる.
ヤコビの楕円関数JacobiSN[u, m]およびJacobiCN[u, m]は,それぞれsn (u)=sin (Phi)およびcn (u)=cos (Phi)で与えられる.ただし,Phi=am (uVerticalSeparatorm)とする.また,JacobiDN[u, m]は,で与えられる.
ヤコビの楕円関数JacobiPQ[u, m]は全部で12種類存在する.それらは,PQSCDNから組み合せることで作れる.それぞれのヤコビの楕円関数JacobiPQ[u, m]は,pq (u)=pn (u)/qn (u)を満足する.ただし,この式ではnn (u)=1とする.
三角関数の間にはさまざまな関係式があるが,それに似た関係がヤコビの楕円関数の間にも数多くある.ヤコビの楕円関数は,極限を取ったとき,三角関数に還元する.このため,sn (uVerticalSeparator0)=sin (u)sn (uVerticalSeparator1)=tanh (u)cn (uVerticalSeparator0)=cos (u)cn (uVerticalSeparator1)=sech (u)dn (uVerticalSeparator0)=1dn (uVerticalSeparator1)=sech (u)というような関係が成り立つ.
Pq (u)の記述が積分 を表すのに使われることがある.「楕円積分」で定義したヤコビのゼータ関数を使って表せる.
楕円関数の重要な特性のひとつとして,引数の複素数値について二重の周期性を持つことが挙げられる.通常の三角関数は単一な周期性を持つ.つまり,任意の整数 s について f (z+sOmega)=f (z) の周期性を持つ.これに対して,楕円関数は二重周期性を持つ.つまり,f (z+rOmega+sOmegaPrime)=f (z)の周期性が rs の任意の整数の対について成り立つ.
sn (uVerticalSeparatorm)のようなヤコビの楕円関数は,複素 u 平面上で2重の周期性を持つ.周期には Omega=4K (m)OmegaPrime=4iK (1-m)が含まれる.ここで,K は第一種完全楕円積分を表す.
ヤコビの楕円関数の記述pq (uVerticalSeparatorm)においてpとqのどちらを選択するかは,4分の1周期の点で得られる KiKPrime の関数値から判明する.
ヤコビの楕円関数の絶対値が2つの方向に沿って基本周期を持つのがグラフから分かる.
In[3]:=
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Out[3]=
Mathematica には,逆ヤコビの楕円関数であるInverseJacobiSN[v, m]InverseJacobiCN[v, m]等も組み込まれている.例えば,逆関数の1つ,sn-1 (vVerticalSeparatorm)は,v=sn (uVerticalSeparatorm)が成り立つための u の値を与える.逆ヤコビの楕円関数は楕円積分に関連している.
4種類の楕円シータ関数 CurlyThetaa (u, q)は,a123または4としてEllipticTheta[a, u, q]から作ることができる.これらの関数は,CurlyTheta1 (u, q)=2q1/4 (-1)nqn (n+1)sin[ (2n+1)u]CurlyTheta2 (u, q)=2q1/4qn (n+1)cos[ (2n+1)u]CurlyTheta3 (u, q)=1+2qn2cos (2nu)CurlyTheta4 (u, q)=1+2 (-1)nqn2cos (2nu)で定義される.シータ関数はパラメータ q を明示しないで CurlyThetaa (u)と書かれることもある.シータ関数は,CurlyTheta (uVerticalSeparatorm)と書かれることもあるが,その場合に mqq=exp[-PiK (1-m)/K (m)]という式で関係付けられている.また,qq=eiPiTau で与えられる Tau に置き換えられることもある.これらすべてのシータ関数は拡散方程式 PartialD2CurlyTheta (u, Tau)/PartialDu2=4Pii PartialDCurlyTheta (u, Tau)/PartialDTau を満たす.
次元 p,ベクトル s のリーマンの正方モジュラ行列 Tau を持つシーゲルのシータ関数SiegelTheta[Tau, s]は,複素次元 p までの楕円シータ関数を生成する.これはで定義され,n はすべての p 次元整数ベクトル上を動く.特性関数SiegelTheta[Nu, Tau, s]を持つシーゲルのシータ関数は,で定義され,特性 Nu は1対の p 次元ベクトル{Alpha, Beta}を表す.
ヤコビの楕円関数はシータ関数の比としても表すことができる.
この他,シータ関数の表記には,CapitalTheta (uVerticalSeparatorm)=CurlyTheta4 (vVerticalSeparatorm)CapitalTheta1 (uVerticalSeparatorm)=CurlyTheta3 (vVerticalSeparatorm)H (uVerticalSeparatorm)=CurlyTheta1 (v)H1 (uVerticalSeparatorm)=CurlyTheta2 (v)がある.ただし,v=Piu/2K (m)とする.
ネビル(Neville)のシータ関数は,先のシータ関数を使って,CurlyThetas (u)=2K (m)CurlyTheta1 (vVerticalSeparatorm)/ CurlyThetac (u)=CurlyTheta2 (vVerticalSeparatorm)/CurlyTheta2 (0VerticalSeparatorm)CurlyThetad (u)=CurlyTheta3 (vVerticalSeparatorm)/CurlyTheta3 (0VerticalSeparatorm)CurlyThetan (u)=CurlyTheta4 (vVerticalSeparatorm)/CurlyTheta4 (0VerticalSeparatorm)と定義できる.ここで,v=Piu/2K (m)とする.ヤコビの楕円関数はネビルのシータ関数の比として表すことができる.
ワイエルシュトラス(Weierstrass)の楕円関数WeierstrassP[u, {g2, g3}] は,楕円積分の逆関数と見ることができる.ワイエルシュトラスの関数 WeierstrassP (u;g2, g3)は, を満たす x の値を与える.関数WeierstrassPPrime[u, {g2, g3}]は,で与えられる.
ワイエルシュトラスの関数は,基本半周期 OmegaOmegaPrime を用いて書かれることもあり,この OmegaOmegaPrimeWeierstrassHalfPeriods[{u, {g2, g3}]を使い不変数 g2g3 から求まる.
逆ワイエルシュトラスの楕円関数InverseWeierstrassP[p, {g2, g3}]は,p=WeierstrassP (u;g2, g3)とする u の2つの値の1つを返す.この値は複素半周期 OmegaOmegaPrime によって定義される平行四辺形内にある.
逆ワイエルシュトラスの楕円関数InverseWeierstrassP[{p, q}, {g2, g3}]は,p=WeierstrassP (u;g2, g3)および q=WeierstrassPPrime (u;g2, g3)となる u の一意的な値を返す.u にそのような値が存在するには,pqq2=4p3-g2p-g3の関係式を満たす必要がある.
ワイエルシュトラスのゼータ関数WeierstrassZeta[u, {g2, g3}] とワイエルシュトラスのシグマ関数WeierstrassSigma[u, {g2, g3}]は,ワイエルシュトラスの楕円関数に各々,ZetaPrime (z;g2, g3)=-WeierstrassP (z;g2, g3)SigmaPrime (z;g2, g3)/Sigma (z;g2, g3)=Zeta (z;g2, g3)の関係式で関連している.
ワイエルシュトラスのゼータ関数とワイエルシュトラスのシグマ関数は周期性を持たないため,厳密には楕円関数ではない.

楕円モジュラ関数

DedekindEta[Tau]デデキントのイータ関数 Eta (Tau)
KleinInvariantJ[Tau]クラインの不変モジュラ関数 J (Tau)
ModularLambda[Tau]モジュラ・ラムダ関数 Lambda (Tau)

楕円モジュラ関数

モジュラ・ラムダ関数ModularLambda[Tau]は,Tau=OmegaPrime/Omega で与えられる半周期の比とパラメータを m=Lambda (Tau)の関係式で関連付ける.
クライン(Klein)の不変モジュラ関数KleinInvariantJ[Tau]とデデキント(Dedekind)のイータ関数DedekindEta[Tau]は,の関係式を満たす.
楕円モジュラ関数は,引数の特定な一次分数変換において不変になるように定義されている.このため,例えば,TauTau+2TauTau/ (1-2Tau)の変換操作をどう組み合せて行ったとしても Lambda (Tau)は不変である.

一般化された楕円積分と楕円関数

ArithmeticGeometricMean[a,b]ab の算術幾何平均
EllipticExp[u,{a,b}]楕円曲線 y2=x3+ax2+bx に随伴した一般化された指数
EllipticLog[{x,y},{a,b}]楕円曲線 y2=x3+ax2+bx に随伴した一般化された対数

一般化された楕円積分と楕円関数

ここまで述べた楕円積分や関数の定義は伝統的な使い方に基づいている.現代の代数幾何学では,もう少し一般化された定義の方が都合がよい.
関数EllipticLog[{x, y}, {a, b}]は,積分 の値として定義される.ただし,平方根の符号は とする y を与えることで指定する. の形の積分は,常用対数(および,逆三角関数)を用いて表せる.平方根でくくられた多項式を三次にして,これを一般化したのがEllipticLogと考えるとよい.
EllipticExp[u, {a, b}]EllipticLogの逆関数である.この関数はEllipticLogに引数としてある{x, y}のリストを返す.EllipticExpは楕円関数で,複素 u 平面上で2重周期を持つ.
ArithmeticGeometricMean[a, b]は,2個の数 ab の算術幾何平均(AGM)を返す.この量は,楕円積分や他の関数を計算する数値アルゴリズムにおいて中心的な役割を果たす.a0=ab0=b を初期値として,必要な精度の下で an=bnとなるまで変換 を繰り返すことで,AGMが求まる.
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