WOLFRAM

バージョン11.3では,WSMLinkパッケージの機能のほとんどが,Wolframシステムに実験的に導入された機能で代替されるようになっている. »

SystemModelerでの信頼性

コンポーネントやシステムの信頼性とは,それが指定された期間機能する確率である.これは寿命分布としてモデル化される.個々のコンポーネントから構築されたシステムには,コンポーネントの寿命分布とシステム構造から計算できる寿命分布がある.信頼性は,経済的理由(保証,顧客の満足度等)の他,安全上の理由(原子力,海洋,航空宇宙)でよく使われる.

このチュートリアルに記述されている機能の中には,完全な Wolfram SystemModeler 製品でしか利用できないものもある.

行動モデル

行動モデルは,システムがどのように動作するかを解析しようとする.例えば車等のシステムでは,エンジン内でのガソリンの燃焼,ピストンの動作,車輪への動力の伝達がモデル化される.

行動モデルはものがどのように動作するか,また設計の変更によりシステム全体の動作がどのように変化するかを理解したり,特定のシステム設計の問題を見付けたりするのに便利である.

信頼性モデル

信頼性モデルは,システムが満足できる程度でどれくらいの期間機能するかに関心を向けたものである.これはシステムが機能するためにはコンポーネントのどのような組合せが機能しなければならないかを調べることで行われる.車の簡単な信頼性モデルでは,タイヤが正常で(パンクしていない等),エンジンが十分なパワーを生成し,トランスミッションがそのパワーを車輪に伝達し,2つのブレーキシステムのうちのどちらかが動作する場合に, 車が動作するものと考える.

システムのそれぞれのコンポーネントには,その種のコンポーネントがどのくらいの期間機能するかを記述する分布が与えられる.これらのコンポーネントの信頼性と,どのコンポーネントが機能しなければならないかというシステムレベルの記述を組み合せて,システム全体がどれくらいの期間機能するかが計算できる.この情報を使って,全体の信頼性を高めるためにはどのコンポーネントを改良しなければならないかとか,信頼性を下げてもシステムの信頼性に影響しないコンポーネントはどれか等を計算することができる.

信頼性情報は,行動シミュレーションに使われるモデルに埋め込むこともできれば,Wolfram言語を使って信頼性解析に使うこともできる.

Model Centerでの信頼性モデリング

SystemModelerのModel Centerでは,コンポーネントやシステムの信頼性情報を編集することができる.これはメインウィンドウ下部の信頼性ビューで行う.ビューが表示されない表示されない場合は,Model Centerで表示 信頼性を選ぶとビューを有効にすることができる.

クラス内の各コンポーネントには,その寿命を記述した分布を割り当てることができる.また,コンポーネントを含むクラスには,そのクラス内のコンポーネントの寿命に従ってReliabilityDistributionあるいはFailureDistributionを割り当てることができる.

分布の編集

各クラスには,システムやコンポーネントの予想寿命を記述した,付属の寿命分布がある.この分布を編集するためには,クラスを開き,Model Center 下部の信頼性ビューで分布を設定する.

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Model Center信頼性ビュー

クラスを大きいシステムのコンポーネントとして使う場合,より大きいシステムを開くか,アイコンビューダイアグラムビューコンポーネントブラウザのいずれかのコンポーネントを選ぶか,信頼性ビューで新しい分布を設定することにより,もとのクラスの寿命分布を上書きすることができる.

大きいシステムの場合,ExponentialDistribution等のコンポーネントに依存しない分布を選ぶか,ReliabilityDistributionFailureDistributionのようなシステム分布を選ぶかすると簡単に寿命分布を設定することができる.

システムの分布を選ぶ場合,与えられる引数は,動作しなければならないコンポーネントや,システムを動作させることができないコンポーネントを参照するブール式でなければならない.例えばReliabilityDistributionを使っており,コンポーネント"resistor1""resistor2"が動作するならばシステムが動作する場合,入力するブール式は"resistor1 and resistor2"になる.

システムに非構造分布を選ぶ場合は,そのクラス内のすべてのコンポーネントは,信頼性情報にかかわらず無視される.

閲覧しているクラスが読込み専用の場合,信頼性ビューも読込み専用であり,信頼性情報を表示するが編集はできない.

Wolfram言語での信頼性解析

SystemModelerのモデルに信頼性情報が存在する場合,WSMModelReliabilityを使うとその情報をWolfram言語で信頼性計算することができる.

Wolfram SystemModeler Linkの機能を使うために,パッケージをロードする.

並列式の寿命分布を取り出す.

生存関数をプロットし,一定期間後にシステムが動作する可能性を示す.

完全なシステムの平均故障時間を取り出す.

その他の例題およびドキュメントは,WSMModelReliabilityでご覧いただきたい.