熱接触

はじめに

熱管理は最新の電子装置において非常に重要である.特に生成された熱を不適切に放熱すると,そのような装置の性能や持続性に直接影響を及ぼす.さらに電子装置のエンクロージャは熱を周囲環境に効率的に移動させることにおいて重要な役割を果たす.多くの場合,電子装置はヒートシンクに接続されている.特に,装置からヒートシンクへのエネルギー移動の効率がこのプロセスでは重要である.装置とヒートシンクが接合されると,この2つの物体の間に熱接触という小さい領域が形成される.熱接触は,装置からヒートシンクに熱を移動させる効率に直接影響するので,熱管理において大きな影響を持つ.

この応用例では,Grujicic et al. [Grujicic, 2005]による研究に基づいて,ヒートシンクに接続された中央処理装置(CPU)の熱管理をモデル化する.特にCPUが達する最高温度に対する熱接触の影響を調べる.図1を見てみよう.

4.gif

アルミニウムのヒートシンクで囲まれた円筒形のシリコンCPUを赤で描画したもの.

シリコンCPUとアルミニウムのヒートシンクの接触を,適切な材料パラメータを使って小さい隙間でモデル化する.

$HistoryLengthをゼロに設定し,FEMパッケージとOpenCascadeLinkパッケージをロードする:

形状

簡単にするために,形状の1/8を2Dでモデル化する.CPUのシリコン領域,熱接触をモデル化する隙間,アルミニウムのヒートシンクの第3の領域がある.

幾何学的パラメータを定義する:

offset は隙間の幅を指定する.

材料の面をDiskで指定する:
カットアウトをBezierCurveで定義する:
Graphicsで面とカットアウトを表示する:
面から OpenCascade の形を作成する:
カットアウトから OpenCascade の形を作成する:
面とカットアウトの間の差分から OpenCascade の形を作成する:
領域の形から境界メッシュを生成する:

より細かいメッシュを得るために"AngularDeflection"オプションを使っている.また生成された境界メッシュは三次元オブジェクトなのでメッシュを二次元に投影する必要がある.

ElementMeshProjectionを使って上の境界メッシュを2Dに投影する:
2D形状を拡大して接触面をモデル化する隙間を見る:
各領域についての領域マーカーを定義する:
それぞれの領域マーカーを持つ要素メッシュを生成する:
メッシュの領域マーカーを調べる:

モデル

各領域の熱伝導率を定義する:
シリコンの熱源の全面積を計算する:
熱源を定義する:
モデルの変数とパラメータを定義する:
PDE演算子を定義する:
境界要素マーカーを調べる:
境界と境界要素マーカーを可視化する:

ElementMarkerにし,熱伝達率と周囲温度を指定して,境界の対流境界条件を定義する.

対流境界条件を定義する:

ElementMarkerにして,境界の対称境界条件を定義する.

対称境界条件を定義する:
PDEを解く:
解から最大値と最小値を得る:
解をDensityPlotとして可視化する:

次のプロットは原点と一番外側の境界を結ぶ直線に沿った温度を可視化したものである.考えられる直線として, 軸に対する角度が で定義される放射状直線がある.

直線に沿った温度を可視化する:

隙間のある熱接触をモデル化することは,実質的に隙間における不連続点を作成することである.これが想定される挙動である.

接触面の温度分布を拡大する:

参考文献

1.  Grujicic, M., Zhao, C. L., & Dusel, E. C. (2005). The effect of thermal contact resistance on heat management in the electronic packaging. Applied Surface Science, 246(13), 290302. https://doi.org/10.1016/j.apsusc.2004.11.030