ばね - 質量 - 梁

この例では,有限要素解析を使って梁をモデル化し,そのばね定数を計算する.これはSolidMechanicsPDEComponentで提供される固体力学モデルのフレームワークを使って偏微分方程式(PDE)モデルを構築することで行う.ばね定数はその後の簡単な質量・ばねシステムモデルで使う.

次のことを行う.まず梁の形状を作成する.その後,梁の片側を固定し,もう一方に下向きの力を加えるPDEを設定する.特定の力について,梁の変位を計算する.いくつかの力についてこれを行うと,力に関連した変位が得られる.このデータから力と変位のプロットを作成してばね定数を計算することができる.

有限要素パッケージをロードし,$HistoryLengthを0に設定する:

梁の形状

有限要素解析の第一歩は,幾何学モデルを作成することである.

梁の形状を作成する:

メッシュの生成

形状のメッシュを生成する:
メッシュを可視化する:

FEMモデル

次にPDEモデルを設定する.これはSolidMechanicsPDEComponentを使って行う.詳細はSolidMechanicsPDEComponentのシンボルページ,または利用可能な機能を詳しく説明した「固体力学」モノグラフをご参照いただきたい.

加硫ゴムの材料データを選ぶ.ここでは,2つの空間次元における梁の変位を表す2つの従属変数(フィールド変数とも言われる) を使う.

2つのモデルを作成する.最初のモデルでは線形弾性材料モデルを使う.次の2つ目のモデルでは超弾性材料モデルを使う.

固体力学成分を設定する:

次に境界条件を考える.

梁が左側で固定されるようにする:
梁の右側で下向きのパラメトリックの力を設定する:

ソルバ

PDEを解くためにパラメトリックソルバを設定する.境界荷重の力が変更したいパラメータである.

下向きの力に対するパラメトリックソルバを作成する:
さまざまな力に対するパラメトリック関数を評価し,関連する変位を保存する:
最大の力に対するばねの完全変位を可視化する:

力・変位プロット

ばね定数を計算するために,力・変位プロットを作成する.

形状内のある点を設定する:

変位の大きさを計算して,加えられた力についてそれを記録する.

さまざまな変位解に対してこの点における変位の大きさを評価する:

材料モデルは線形弾性なので,力と変位の関係も線形である.ばね定数を計算するために補間関数を作成しその導関数を計算する.

データから補間関数を作成する:
補間関数を可視化する:
導関数を計算する:
ばね定数をプロットする:

結果は曲線になっている.しかしこれは数値によって作り出されたものである. 軸も同じ定数値であるが,プロット関数は値の最小の変化ですら示そうとしている.

補間関数の実際の値を調べる:
データの平均としてばね定数を計算する:

質量・ばねシステムモデル

このセクションでは質量・ばねシステムモデル内で計算されたばね定数を使う.このモデルは簡単なので,Wolfram言語で作成する.

梁の質量を計算する:
質量・ばねシステムモデルのコンポーネントを集める:
システムモデルの接続を行う:
コンポーネントを繋ぎ,ばね定数,質量,初期変位の初期値を設定する:
質量の位置がどのように振動するかを表示する:
さまざまな時間における梁上の力を表示する:

超弾性の梁

加硫ゴムは,ネオフックモデルのような超弾性材料モデルを使ってモデル化した方がよい.これについての詳細は超弾性モノグラフに記載されている.

超弾性材料モデルを設定する:
PDE演算子を設定する:

境界条件は上と同じである.

さまざまな力に対するパラメトリック関数を評価し,関連する変位を保存する:
最大の力に対するばねの完全変位を可視化する:

力変位プロット

力変位プロットでは,変位の大きさを計算し,それを力と一緒に記録する.

さまざまな変位解に対して,この点における変位の大きさを評価する:

これで力・変位関係はもはや線形ではない.

データから補間関数を作成する:
補間関数を可視化する:
導関数を計算する:
ばね定数をプロットする:
補間関数の実際の値を調べる:

ばね「定数」はもはや定数ではなくなった.

非線形ばね

非線形ばねデータを利用するために,線形の場合とは異なる処理を行う.この場合,System Modelerでカスタムモデルを作成しここにインポートする.

システムモデルをインポートする:

我々のアプローチでは,デフォルトのばねコンポーネントの線形の力・変位関係を修正して非線形の挙動を反映させる.線形ばね定数は,このカスタムばねコンポーネントで加えられた forceDisplacement データで置き換えられる.

非線形ばねモデルを抽出して調べる:

このデータは以下のダイアグラムビューで示された表を使って提供される.このビューには,加硫超弾性ゴムの梁に特有の非線形の力・変位関係を特徴付けるデータが含まれている.

非線形ばねをダイアグラムとして可視化する:
モデルで利用可能な変数を調べる:

あとは非線形ばねデータをシステムモデルに割り当てるだけである.データには変数"SpringNonlinear.nonlinearSpring.forceDisplacement"が割り当てられる.

非線形ばねコンポーネントの力・変位曲線を割り当てる:
System Modelerで非線形ばねモデルのシミュレーションを行う:
ばねの位置とばね上の力を抽出する:
変位と力の関係を可視化する:

ここで覚えておかなければならないことが2つある.1つ目は,結果では負の力と動きが見られたが,これらはもとのゴムの梁のモデルから来たものではないということである.これは,使用したモデリングツールのSystem Modelerがこれらの負の値を自ら補填し,もとのモデルから最も近い正の値を使ったことによる.2つ目は梁がもっと動くと(正の変位),それを動かすのに必要な力も上昇するということである.つまり,梁は伸張すればするほど曲がりにくくなるということである.

質量の位置がどのように振動するかを表示する:
梁上の力を表示する:

超弾性ばねとばねの線形弾性モデルを比較する.

線形および非線形の材料モデルで計算されたばねの変位を比較する:
線形および非線形材料モデルで計算された,ばねに作用する力を比較する:

赤で示された非線形モデルが線形モデルよりも剛性ならば,その固有振動数は線形モデルのものよりも大きい.その結果,非線形モデルの変位周期は線形モデルのものよりも短くなる.さらに上で示したように,非線形モデルは同じレベルの変形において線形ばねよりも大きい力に耐えることができる.

この例では非線形PDE力学の複雑性をどのようにして効率的に簡素化し,System ModelerやMathematicaを組み合せてシステムレベルのモデリングで捉えられるかを示した.