微分方程式の分類
微分方程式には,常微分方程式,偏微分方程式,代数微分方程式という3つの基本的な種類があるが,さらに階数,直線性,次数等の属性で細かく分類できる.DSolveで使用される解法および解の性質は,解く方程式の種類に左右される.
微分方程式の「階数」とは,その方程式に含まれる導関数の最高階数のことである.
微分方程式が およびその導関数の一次方程式であり,導関数の係数が独立変数の関数であるとき,その方程式は線形であるという.
極めて単純な非線形方程式の解が,陰形式でのみ求められることがある.このような場合,DSolveはSolveオブジェクトを未評価のまま返す.
線形常微分方程式の係数が に依存しない場合,その常微分方程式は「定数係数を持つ」という.
この方程式は同次形でもある.同次形とは,すべての項に または の導関数が含まれており,右辺がゼロであるものをいう.独立変数の関数を加えると,方程式は非同次形になる.定数係数非同次方程式の一般解は,対応する同次方程式の解に特殊積分を加えることで得られる.
常微分方程式の係数が に依存する場合,その常微分方程式は「変数係数を持つ」という. の有理関数である変数係数を持つ方程式には,簡単に分類できる特異性があるため,そのような方程式を解くために利用できる高度なアルゴリズムがある.
関数と微分方程式との間には,密接な関係がある.ほとんどどのような種類の関数から始めても,その関数が満足する微分方程式を構築することが可能である.逆に,どのような微分方程式でも,その方程式の解という形式で,1つあるいは複数の関数を生成する.実際,従来の分析による特殊関数の多くは,微分方程式の解がその起源となっている.マシュー(Mathieu)関数は,そのような特殊関数のひとつである.マシューは楕円膜の振動の研究に関心を持った.この動作を描写する波動方程式の固有関数は,マシューの関数の積で与えられる.
微分方程式の「次数」とは,その方程式に含まれる最高階数の導関数の最高ベキ数のことである.
このセクションの例では,常微分方程式の分類に焦点を当てた.偏微分方程式の分類もこれと同様であるが,さらに複雑である.偏微分方程式も直線性・非直線性,階数,次数,定数係数か変数係数かで分類できる.しかし,これより大切なのは偏微分方程式が双曲線型,放物線型,楕円曲線型のいずれかを分類することである.この分類の詳細は「二階偏微分方程式」で説明する.