MathematicaからWolframへのアップグレード

バージョン14.1から,Wolframアプリケーションの導入により,Mathematica,Wolfram|Alpha Notebook Edition,Wolfram|One,Finance Platformにアクセスする方法が新しくなった.このアップデートにより,下位互換性のない変更点が生じた.
WolframからMathematicaにアクセスする
Mathematicaバージョン14.1以降を使うためには,これまでのバージョンでMathematicaをインストールしていたようにWolframをインストールする.一旦インストールすると,所有する製品をその中でアクティベートすることができる.お客様のMathematicaライセンスがWolframアプリケーションを介してMathematicaにアクセスするよう,起動時に自動的にインポートされていない場合は,アクティベーションのプロセスに従う.
アクティベートする製品が複数個ある場合,または製品に新しいライセンスを加える場合は,「preferences(環境設定)」メニューの「Product Settings(製品の設定)」タブを開く.
製品の設定と製品の切替え
「製品の設定」スクリーンは「環境設定」メニューの中のタブである.このスクリーンから製品の切替えや追加製品のアクティベートができる.ローカルでアクティベートされた製品やライセンスはこのスクリーンで別々の項目として表示される.「製品の設定」スクリーンの使い方についての詳細は「Wolfram製品の切替え」に記載されている.
特定のバージョンの製品またはライセンスは同じ場所に保存されているので,すべて同じ設定を共有する.
パクレットとパッケージの移動
Wolframでは$UserBaseDirectory(およびその関連パス)が異なるため,以前Mathematica(あるいは他のWolfram製品)にインストールされていたパクレットやパッケージを自動的に検出しない.次の方法を使って,MathematicaのパクレットやパッケージをWolframに移動することができる.

パクレットやパッケージを新たにインストールする

以前MathematicaにインストールしていたパクレットやパッケージをWolframで使い続けるための最も間違いの少ない安全な方法として,Wolframにそれを再びインストールするというものがある.ほとんどのパクレットは必要に応じて再びダウンロードされる.ユーザがWolfram Language Paclet Repositoryからダウンロードしたパクレットのように,なかにはPacletInstallで再インストールしなければならないものもある.
Wolframをインストールしてアクティベートした後,サーバ上でのパクレット名を知っていれば1行のコードでそのパクレットがインストールできる:

既存のパクレットすべてを新しい場所にコピーする

以前のパクレットすべてをWolframで使うためには,Mathematicaの$UserBasePacletsDirectory/Repositoryのコンテンツをすべて対応するWolframのフォルダに手でコピーするのが最も簡単である.これによって古いバージョンのパクレットもすべてコピーすることになるが,Wolframはそれを無視するので問題ないがディスクスペースは使われる.これらのパクレットはもうダウンロードする必要はない.これが最も簡単な解決策である.
以前のバージョンのMathematicaでも現行バージョンのWolframでも,パクレットは$UserBasePacletsDirectoryRepositoryサブディレクトリにインストールされる.これはMathematicaとWolframでは異なる場所となる.以下のコード:
を評価すると正しいパクレットの場所が分かる.
C:\User\ username \AppData\Roaming\Mathematica\Paclets
Windows
~/Library/Mathematica/Paclets
macOS
~/.Mathematica/Paclets
Linux
Mathematica(以前)での$UserBasePacletsDirectoryのデフォルトの値
C:\User\ username \AppData\Roaming\Wolfram\Paclets
Windows
~/Library/Wolfram/Paclets
macOS
~/.Wolfram/Paclets
Linux
Wolfram(新規)での$UserBasePacletsDirectoryのデフォルトの値

既存の特定のパクレットを新しい場所にコピーする

$UserBasePacletsDirectory/Repositoryから特定のパクレットだけをWolframにコピーすることもできる.最も大きいパクレットをコピーして詳細のダウンロード時間を節約することも,Wolfram Language Paclet Repositoryのパクレットだけをコピーすることもできる.後者はディレクトリ名に__(二重アンダースコア)が付いており,手動でインストールされた可能性が高い.
このようにパクレットを個別に選ぶことで,もう必要のないパクレットをコピーする必要がなくなるし,古いバージョンのパクレットが新しい場所でスペースを取ることもなくなる.以前(Mathematica)と現在(Wolfram)のパクレットの場所については前のセクションをご覧いただきたい.

既存のパッケージを新しい場所にコピーする

パッケージは通常$UserBaseDirectory/Applicationsにある.上2つのパクレット関連のセクションと同様に,パッケージも単独で,またはすべて一緒にコピーすることができる.Wolframでも使いたいいずれか/すべてのパッケージをMathematicaの場所からWolframの場所にコピーする.
スタイルシートの移動
パクレットと同様に,新しい$UserBaseDirectory(および関連パス)によって,WolframはMathematica(またはその他のWolfram製品)のためにインストールされていてたスタイルシートを自動的に検出しない.MathematicaのスタイルシートをWolframに移す方法がいくつかある.

スタイルシートを新たにインストールする

以前MathematicaにインストールしていたスタイルシートをWolframで使う最も簡単で安全な方法は,Wolframに新たにインストールすることである.Wolframをインストールしてアクティベートしたら,書式 スタイルシート その他...を選んでWolframにスタイルシートをインストールする.

既存のスタイルシートを新しい場所にコピーする

または,すでにインストールしてあるスタイルシートを現行のMathematicaの場所から対応するWolframの場所にコピーすることもできる.これは希望のスタイルシートを適切な場所を見付けて簡単に行うことができる.
WolframとMathematicaのカスタムスタイルシートは通常$UserBaseDirectorySystemFiles/FrontEnd/StyleSheetsサブディレクトリのサブディレクトリにある.両方の場所を見て所望のスタイルシートを見付けてコピーする.
以下のコマンドを使うとWolframで新しい場所と以前の場所を見付けることができる.
Wolfram(新規)のデフォルトの場所:
Mathematica(以前)のデフォルトの場所:
スタイルシートが$BaseDirectory/SystemFiles/FrontEnd/StyleSheetsにあることは珍しいが,システム管理者等がそこに置くこともできる.
環境設定ファイルをコピーする
Mathematicaの環境設定をWolframでも使いたい場合はWolframで環境設定ファイルを作成することをお勧めする.こうすることで,古い環境設定が製品の現行バージョンに影響を及ぼす心配がなくなる.
以前の環境設定をMathematicaからWolframにコピーしたければ,カーネルおよび/またはフロントエンドの場所から関連するinit.mファイルを取得すればよい.以下で述べる場所はその製品(MathematicaまたはWolfram)についてのもので,別の製品の環境設定の場所にアクセスするためにはそれに応じてファイルパスを更新する.

カーネル

カーネルで使用される初期化ファイルには関数定義,ロードするパッケージ,カーネルのオプション設定等起動時に評価されるWolfram言語コマンドが含まれている.これらのコマンドはWolframシステムのフロントエンドでも利用できる.

$BaseDirectory /Kernel/ init.m

このファイルはカーネルの初期化に使われるので,カーネルを起動するすべてのユーザに適切なカーネルコマンドを保存する.

$UserBaseDirectory /Kernel/ init.m

このファイルは,カーネルの初期化に使われる,ユーザ特有のコマンドを保存する.
カーネルの初期化ファイルは自動的には変更されない.これらのファイルが手動で編集されたことがない場合,ファイルにはコマンドが含まれない.

フロントエンド

フロントエンド初期化ファイルはオプションインスペクタのグローバルオプションの値等,環境設定を保存する.これらのファイルは,フロントエンドの設定が変更されると,Wolframシステムによって自動的に更新される.このファイルに変更を加えるためには,ファイルを直接編集するのではなくWolfram内で変更することをお勧めする.

$BaseDirectory /FrontEnd/ init.m

このファイルはWolframシステムフロントエンドすべてで使われるシステム規模のデフォルトを保存する.「システム規模のデフォルト」にはこのグローバルファイルに変更を加える方法が記載されている.

$UserBaseDirectory /FrontEnd/ init.m

このファイルは各ユーザに特有のフロントエンド内の設定を定義する.
ユーザがフロントエンド使用時に環境設定を変更すると,フロントエンドの初期化ファイルは自動的に変更される.
新しい場所と名前
実行ファイルの名前がMathematicaからWolframNBに変更された.
Wolframでは,$InstallationDirectory$BaseDirectory$UserBaseDirectoryのような組込み変数の場所のデフォルト値が異なる.
C:\ProgramFiles\WolframResearch\Wolfram\ 14.1
Windows
/Applications/Wolfram.app/Contents
macOS
/usr/local/Wolfram/Wolfram/ 14.1
Linux
Wolframインストールディレクトリのデフォルトの場所
C:\ProgramData\Wolfram
Windows
/Library/Wolfram
macOS
/usr/share/Wolfram
Linux
$BaseDirectoryの通常の値
C:\User\ username \AppData\Roaming\Wolfram
Windows
~/Library/Wolfram
macOS
~/.Wolfram
Linux
$UserBaseDirectoryの通常の値
Wolfram言語で使われる,場所をカスタマイズするための環境変数も変更されている.
MATHINITはWOLFRAMNB_INITになった.
MATHEMATICA_BASEはWOLFRAM_BASEになった.
MATHEMATICA_USERBASEはWOLFRAM_USERBASEになった.