MoleculeValue
MoleculeValue[molecule,property]
与えられた分子の指定された特性の値を与える.
MoleculeValue[{molecule1,molecule2,…},property]
各 moleculeiの指定された特性の値のリストを与える.
MoleculeValue[molecule,{property1,property2,…}]
指定された分子の propertyiの値のリストを与える.
MoleculeValue[molecule,{property,item}]
molecule 内の item について指定された特性の値を与える.
MoleculeValue[{molecule1,molecule2,…},{property1,property2,…}]
各 moleculeiの propertyiの値のリストを与える.
詳細とオプション
- molecule が有効な分子のとき,molecule[property]はMoleculeValue[molecule,property]に等しい.
- MoleculeValue["Properties"]は使用可能な全特性を返す.
- 原子座標に依存する特性値を要求するとき,それらの座標が分子式に含まれていない場合は座標が自動的に計算される.座標の生成に失敗すると,Missing値が返される.
- 分子の一部について言及する特性については,item は以下の形を取り得る.
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ind 1つの原子インデックス(1,2,…) {ind1,ind2,…} 原子インデックスのリスト {{ind1,ind2},…} 原子インデックスのリストのリスト bnd 1つの結合 (Bond[{ind1,ind2},type]) {bnd1,bnd2,…} 結合のリスト All 全原子または全結合 - 一般的な分子の特性には以下がある.
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"AtomDiagramCoordinates" 構造線図座標 "BridgeheadAtoms" 少なくとも2つの結合を共有する環に共通の原子 "ElementCounts" "Element"実体と対応する原子数の連想<el->n,… > "ElementMassFraction" "Element"実体と対応する百分率としての質量分率のリスト {{el,n},…} "ElementTally" "Element"実体と対応する原子数のリスト{{el,n},…} "ExplicitAtomCount" 暗黙の水素を除いた分子の原子 "ExplicitAtomList" 暗黙の水素を除いた分子の原子のリスト "ExplicitBondCount" 暗黙の水素を除いた分子内の結合数 "ExplicitBondList" 暗黙の水素を除いた分子内の結合リスト "FullAtomCount" 暗黙の水素を含む分子中の原子数 "FullAtomList" 暗黙の水素を含む分子中の原子のリスト "FullBondCount" 暗黙の水素を含む分子中の結合数 "FullBondList" 暗黙の水素を含む分子中の結合のリスト "MetaInformation" 分子式に含まれる任意のメタ情報 "MMFFEnergy" MMFF94力場を使って計算されたエネルギー "MMFFsEnergy" MMFF94s力場を使って計算されたエネルギー "MolarMass" モル質量 "MolecularMass" 分子質量.質量数が指定されていない原子については平均原子質量を使う "MonoIsotopicMolecularMass" すべての原子について最もたくさんある同位体を使った分子質量 "PossibleStereocenters" キラル原子についての原子インデックスのリスト "RelativeMolecularMass" 分子量と統一原子質量単位との比 "ResonanceStructureList" 分子の共鳴構造のリスト "SpiroAtoms" 厳密に1つの原子を共有する環の間で共有されている原子 "StereochemistryElements" StereochemistryElementsで定義されている任意の定義済みローカル立体化学を詳述する連想のリスト "TautomerList" 分子の互変異性体のリスト "TotalCharge" 分子内の全形式電荷の合計 "UFFEnergy" UFF力場を使って計算されたエネルギー - 以下は,分子識別子に対応する特性である.
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"InChI" 国際化学識別子 "InChIKey" 国際化学識別子キー "MolecularFormulaString" 分子式文字列 "MolecularFormula" 表示形式の分子式 "SMILES" 標準SMILES文字列 {"SMILES",{id1,id2,…}} 指定された原子を含みインデックス id1の原子に根ざしているSMILES文字列 "CanonicalSMILES" 水素が暗黙的で原子が標準的な並び方のSMILES文字列 "IsomericSMILES" 暗黙の水素が,同位体,立体情報が含まれた,原子が標準的な並び方のSMILES文字列 "AnonymousGraphSMILES" すべての原子とすべての単結合が"*"に設定されたSMILES文字列 "ElementGraphSMILES" すべての結合が単結合に設定されたSMILES文字列 "MurckoScaffoldSMILES" 置換基を除いたあとのSMILES文字列 "ExtendedMurckoScaffoldSMILES" 置換基を"*"で置換したSMILES文字列 "PubChemSynonyms" "PubChem"から入手した分子の代替名のリスト - "SMILES"特性には分子に存在する明示的なすべての水素原子が含まれる.この特性は原子の順序を標準的にはしない.
- 次は,ExternalIdentifierオブジェクトのリストを返す特性である.
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"CASRegistryNumber" CAS登録番号 "ChEMBLID" ChEMBL識別番号 "ChemSpiderID" ChemSpider識別番号 "PubChemCompoundID" PubChem CID番号 "PubChemSubstanceID" PubChem SID番号 "WikidataID" Wikidata ID - 分子の外部識別子の抽出にはインターネット接続が必要である.
- 分子内の原子に言及する特性は,{property,id}または{property,{id1,id2,…}}で指定できる.ただし,id は原子インデックスである.
- 以下は,原子の特性である.
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"AromaticAtomQ" 原子が芳香族の場合にTrueを返す "AtomChirality" 絶対原子キラリティ.キラル原子に対しては"R","S","r","s"または"Unspecified" を返し,それ以外の場合はNoneを返す "AtomicMass" 原子質量 "AtomicNumber" 原子数 "AtomicSymbol" IUPAC原子記号 "AtomIndex" 原子インデックス "AtomSMILES" 原子"SMILES"シンボル "AtomSMARTS" 原子"SMARTS"シンボル "CIPRank" カーン・インゴルド・プレローグ(Cahn-Ingold-Prelog)順位則を使った原子順位 "CoordinationNumber" 結合された原子数 "DefaultValence" デフォルトの原子価 "Element" 対応する"Element"実体 "FormalCharge" 形式電荷 "GasteigerPartialCharge" Gasteiger電荷モデルを使った原子電荷 "GeometricStericEffectIndex" 幾何学立体指標.電子座標が必要 "HeavyAtomCoordinationNumber" 重原子との結合数 "HydrogenCount" 原子に結合している水素の数 "ImplicitHydrogenCount" 原子に結合している暗黙の水素の数 "Isotope" 対応する"Isotope"実体 "MassNumber" 質量数.指定されていない場合にはNoneを返す "MMFFPartialCharge" MMFF力場を使って計算された電荷 "MostAbundantMassNumber" 最もたくさんある同位体の質量数 "OrbitalHybridization" 計算された起動混成 "OuterShellElectronCount" 外殻の電子数 "PiElectronCount" 電子の数 "RingMemberQ" 原子が環の一部の場合にTrueを返す "TopologicalStericEffectIndex" 位相的立体効果指標 "UnpairedElectronCount" 不対電子数 "UnsaturatedAtomQ" 電子が不飽和の場合にTrueを与える "Valence" 価電子数 - 分子内の結合について言及する特性は{property,bnd}または{property,{bnd1,bnd2,…}}で指定できる.ただし,bnd はBondオブジェクトまたは結合された2つの原子インデックスのリストである.
- 結合の特性には以下がある.
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"BondIndex" 分子についての結合リスト中の結合の位置 "BondLength" 指定された原子間のユークリッド距離 "BondOrder" 数値結合次数 "BondStereo" カーン・インゴルド・プレローグ順位則を使って決定された絶対結合立体 "BondType" 結合タイプ("Single","Double"等) "ConjugatedBondQ" 結合が共役系の一部の場合はTrueを返す "RingBondQ" 結合が環の一部の場合はTrueを返す - 原子または結合の特性については,property は{property,All}に等しい.
- デフォルトオプション設定のIncludeHydrogensAllでは,MoleculeValueによってすべての原子の特性血が返される.暗黙の水素を除外したければオプション値"ExplicitOnly"を使うとよい.
- 次は,分子グラフの特性である.
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"AdjacencyMatrix" 隣接行列 "BondWeightedAdjacencyMatrix" 結合重み付き隣接行列 "BurdenMatrix" 従来のBurden行列 "GraphDistanceMatrix" グラフ距離行列 "SmallestSetOfSmallestRings" 最小環の最小集合の原子インデックス - 次は,分子幾何学に依存する特性である.
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"AtomCoordinates" デカルト原子座標のリスト {"BondAngle",{id1,id1,id3}} 指定のインデックスを持つ3つの原子で形成された平面角 "CenterOfMass" 質量の中心 {"CenterOfMass",{id1,id2,…}} リストされた原子だけを含む質量の中心 "CoulombMatrix" 要素 と のクーロン行列.と は核電荷とその位置 "CoulombMatrixEigenvalues" クーロン行列の評価 "DistanceMatrix" 原子の中心間のユークリッド距離の行列 "InertiaTensor" 慣性テンソル {"InteratomicDistance",{id1,id2}} 指定されたインデックスを持つ原子間のユークリッド距離 {"OutOfPlaneAngle",{id1,id2,id3,id4}} 原子 id1,id2,id3を含む平面と原子 id2,id4を含む結合間のウィルソン角 "PrincipalAxes" 主軸,分子の慣性テンソルの固有ベクトル "PrincipalMoments" 主慣性モーメント {"TorsionAngle",{id1,id2,id3,id4}} 原子 id1,id2,id3を含む平面と,原子 id2,id3,id4を含む平面間のねじれ角 - 幾何学特性の"BondAngle","InteratomicDistance","OutOfPlaneAngle","TorsionAngle"は,原子インデックスのリストのリストを取って値のリストを返すもこともある.
- 分子対称性に関する特性には次がある.
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"PointGroupDisplay" 分子点群の表示形式によるシェーンフリース記号 "PointGroupString" 文字列としての分子点群 "SymmetryElements" 回転軸,対称平面,反転の中心を含む対称要素のリスト - 以下を含む多くの位相記述子が使用できる.
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"AliphaticCarbocycleCount" 脂肪族炭素環数 "AliphaticHeterocycleCount" 脂肪族複素環数 "AliphaticRingCount" 脂肪族環数 "AmideBondCount" アミド結合数 "AromaticCarbocycleCount" 芳香族炭素環数 "AromaticHeterocycleCount" 芳香族複素環数 "AromaticMoleculeQ" 分子が芳香結合を含んでいる場合にTrueを返す "AromaticRingCount" 芳香族環数 "Autocorrelation2D" 2D自己相関 "BoettcherComplexity" Böttcherの分子の複雑さ "BridgeheadAtomCount" すくなくとも2つの結合を共有する環に共通する原子である橋頭原子の数 "Chi0n"-"Chi4n" Kier-Hall結合指標 "Chi0v"-"Chi4v" Kier-Hall原子価接続性指標 "CrippenClogP" 分配係数で計算されたCrippen "CrippenMR" Crippenモル屈折率 "DegreeOfUnsaturation" 不飽和度 "FractionCarbonSP3" 炭素 sp3の割合 "HBondAcceptorCount" 水素結合受容体数 "HBondDonorCount" 水素結合供与体数 "HeteroatomCount" ヘテロ原子数 "HeterocycleCount" 複素環数 "Kappa1"-"Kappa3" κ 型指標 "KierHallAlphaShape" Kier-Hall変形形状指標 "LabuteApproximateSurfaceArea" ラビュート(Labute)近似表面積 "LipinskiHBondAcceptorCount" リピンスキー(Lipinski)H結合受容体数 "LipinskiHBondDonorCount" リピンスキーH結合供与体数 "MolecularQuantumNumbers" 分子量子数 "PEOEVSA" 軌道電気陰性度ファンデルワールス(van der Waals)表面積の部分等化 "QuantitativeEstimateOfDrugLikeness" 薬らしさの数量的推定 "RingCount" 環数 "RotatableBondCount" 回転可能結合数 "SaturatedCarbocycleCount" 飽和炭素環数 "SaturatedHeterocycleCount" 飽和複素環数 "SaturatedRingCount" 飽和環数 "SlogPVSA" Crippen分配係数ファンデルワールス表面積 "SMRVSA" Crippenル屈折率ファンデルワールス表面積 "SpiroAtomCount" スピロ原子数 "StereocenterCount" 可能な立体中心数 "SyntheticAccessibilityScore" 総合アクセシビリティスコア "TopologicalPolarSurfaceArea" 位相的極表面積 "UnspecifiedStereocenterCount" 未指定立体中心数 - 以下は,原子座標に依存する幾何学分子記述子である.
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"Asphericity" で定義される非球面性.は回転テンソルのモーメントである "Autocorrelation3D" 3D自己相関 "Eccentricity" で定義される離心率.は慣性テンソルのモーメントである "GETAWAY" 幾何学,位相,原子の重さのアセンブリ記述子 "GETAWAYAssociation" "GETAWAY"特性のAssociation版 "InertialShapeFactor" で定義される慣性形状係数 "MORSE" 電子線解析に基づいた飽和の3D分子表現 "MORSEAssociation" "MORSE"特性のAssociation版 "NormalizedPrincipalMomentRatios" 第1正規化主モーメント比 {,} "PlaneOfBestFitDistance" 重原子から最適平面までの平均距離 "RadiusOfGyration" 旋回半径 "RDF" 動径分布関数記述子 "SpherosityIndex" で定義される球形指標 "WHIM" 重み付き全体不変分子記述子 "WHIMAssociation" "WHIM"特性のAssociation版 - MoleculeValue[molecule,property,"modifier"]では,次の修飾子を使うことができる.
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"PropertyAssociation" 特性と特性値の連想 "Dataset" 行が特性と特性値の連想であるデータ集合 "MoleculePropertyAssociation" 指定された分子がキーで値が特性と特性値のネストした連想である連想 - 可能な場合は,MoleculeValue[ MoleculeProperty[property],"MetaInformation"]は,使用可能な情報のデータ集合(引用等)を与える.
例題
すべて開くすべて閉じる例 (4)
スコープ (14)
原子の特性 (3)
幾何特性 (2)
幾何特性は分子の3D座標に依存する.座標が何も与えられなければ,自動座標が生成される."Chemical"実体から分子を作成し,Wolfram Knowledgebaseからの座標を使う:
位相記述子 (2)
分子のリストについて sp3混成軌道を持つ炭素原子の割合を求める:
"BridgeheadAtomCount"は少なくとも2つの結合を共有する環に共通の原子の数を返す:
"BridgeheadAtoms"特性を使って橋頭原子を可視化する:
この定義には架橋化合物しか含まれておらず,単純な結合系は除外されているので注意のこと:
縮合環原子を含む数についてはAtomパターンを用いるとよい:
識別子 (2)
"SMILES"特性はすべての水素原子を含む.原子順序を標準化しようとはしない."CanonicalSMILES"は標準的な順序と暗黙の水素原子を使うが,同位体と立体情報は削除する."IsomericSMILES"は立体情報と同位体を含む標準バージョンである.SMILESの3つの特性をDatasetと比較する:
この分子をWikidataDataで検索する:
オプション (2)
IncludeHydrogens (2)
原子ごとの特性についてのクエリを行っても,すべての原子についての値が返される:
IncludeHydrogensNoneを使って原子の大部分を占める水素を除外することができる:
水素原子は,その存在が通常の原子価規則から推測できるときは省略できる.IncludeHydrogens"ExplicitOnly"を使って明示的にリストされた原子だけを含むようにする:
考えられる問題 (1)
Moleculeは原子価を水素原子で埋めようとするので,もとの分子式に含まれない水素原子が結果に含まれる:
水素原子が現れないようにしたければ,MoleculeオプションのValenceFillingNoneを使うこともできる:
テキスト
Wolfram Research (2019), MoleculeValue, Wolfram言語関数, https://reference.wolfram.com/language/ref/MoleculeValue.html (2022年に更新).
CMS
Wolfram Language. 2019. "MoleculeValue." Wolfram Language & System Documentation Center. Wolfram Research. Last Modified 2022. https://reference.wolfram.com/language/ref/MoleculeValue.html.
APA
Wolfram Language. (2019). MoleculeValue. Wolfram Language & System Documentation Center. Retrieved from https://reference.wolfram.com/language/ref/MoleculeValue.html