ItoProcess
ItoProcess[{a,b},x,t]
伊藤過程 を表す.ただし,である.
ItoProcess[{a,b,c},x,t]
伊藤過程 を表す.ただし,である.
ItoProcess[…,{x,x0},{t,t0}]
初期条件 を使う.
ItoProcess[…,…,…,Σ]
共分散 Σ のウィナー(Wiener)過程 を使用する.
ItoProcess[proc]
可能な場合は常に proc を標準伊藤過程に変換する.
ItoProcess[sdeqns,expr,x,t,wdproc]
確率微分方程式 sdeqns,出力式 expr,状態 x,時間 t で指定され,過程 dproc に従う w によって駆動される伊藤過程を表す.
詳細とオプション
- ItoProcessは伊藤拡散あるいは確率微分方程式としても知られている.
- ItoProcessは連続時間・連続状態のランダム過程である.
- ドリフト a が 次元ベクトルで拡散 b が × 次元行列の場合,過程は 次元で 次元WienerProcessによって駆動される.
- 係数 a および b によく使われる指定
-
a スカラー,b スカラー a スカラー,b ベクトル a ベクトル,b ベクトル a ベクトル,b 行列 - 確率微分方程式 は積分方程式 として書かれることもある.
- デフォルトの初期時間 t0 は0であるとみなされる.デフォルトの初期状態 x0 は0である.
- デフォルトの共分散 Σ は恒等行列である.
- 一般共分散 Σ については,ItoProcessは拡散行列 b を b.Σ1/2に変換することで過程を正規化する.Σ1/2は可能な場合は Σ の下コレスキー因子である. »
- 標準伊藤過程は,微分状態 の部分集合からなる出力 を持つ.
- 標準ItoProcess形式に変換できる過程 proc には,OrnsteinUhlenbeckProcess,GeometricBrownianMotionProcess,StratonovichProcess,ItoProcessが含まれる.
- ItoProcessを標準形式に変換するためには,伊藤の補助定理が自動的に使われる.
- sdeqns における確率微分方程式は の形式を取ることができる,ここで, は \[DifferentialD]であり,ddを使って入力することができる.微分 と は伊藤微分であると解釈される.
- 出力式 expr は x[t] と t を含む任意の式でよい.
- 駆動する過程 dproc は標準伊藤過程に変換できる任意の過程でよい.
- 次は,ItoProcessの関連特性である.
-
"Drift" ドリフト項 "Diffusion" 拡散行列 "Output" 出力状態 "TimeVariable" 時間変数 "TimeOrigin" 時間変数の原点 "StateVariables" 状態変数 "InitialState" 初期状態値 "KolmogorovForwardEquation" Kolmogorov前進方程式(Fokker-Planckの方程式) "KolmogorovBackwardEquation" Kolmogorov後退方程式 "Derivative" 伊藤導関数 "FeynmanKacFormula" Feynman-Kacの公式から得られた偏微分方程式 - ItoProcessに特有のRandomFunctionにおけるMethod設定 »
-
"EulerMaruyama" オイラー・丸山(次数1/2,デフォルト) "KloedenPlatenSchurz" Kloeden–Platen–Schurz(次数3/2) "Milstein" Milstein(次数1) "StochasticRungeKutta" 3段階Rossler SRKスキーム(次数1) "StochasticRungeKuttaScalarNoise" スカラーノイズのための3段階Rossler SRKスキーム(次数3/2) - ItoProcessは,RandomFunction,CovarianceFunction,PDF,Expectation等の関数で使うことができる.
例題
すべて開くすべて閉じるスコープ (19)
基本的な用法 (10)
確率微分方程式 からのドリフト と拡散 でウィナー過程を定義する:
正規化された過程はと等しい拡散行列を持つ. は正規化前の拡散行列である:
確率微分方程式 および に対応するベクトル過程 および を定義する:
さまざまなメソッドでItoProcessの経路のシミュレーションを行う:
シミュレーションメソッドをRandomFunctionのオプションとして指定する:
過程特性の抽出 (2)
ここではInactiveを使って偏導関数の展開を防いでいる.Activateを使って式を展開する:
関数 の伊藤導関数を計算する.出力はドリフト項と拡散項からなるリストである:
特性"FeynmanKacFormula"は,解 が条件付き期待値 と終端条件 を満足する偏微分方程式を与える:
一般化された状態には追加的な引数を与えることができる.特性"FeynmanKacFormula"は,追加引数 を与えられると解が条件付き期待値 と同じ終端条件を満足する偏微分方程式を与える:
特性"FeynmanKacFormula"は,第3引数 があると解が条件付き期待値 と同じ終端条件を満足する偏微分方程式を与える:
ItoProcessでHestonモデルを定義する:
特殊伊藤過程 (5)
WienerProcessに対応する伊藤過程:
GeometricBrownianMotionProcessに対応する伊藤過程:
BrownianBridgeProcessに対応する伊藤過程:
OrnsteinUhlenbeckProcessに対応する伊藤過程:
CoxIngersollRossProcessに対応する伊藤過程:
アプリケーション (11)
計算特性 (3)
マルチンゲール (3)
モデリング (2)
熱変動の影響下での自由粒子のダイナミクスは,Langevin運動方程式 によってモデル化できる.ここで は標準のWienerProcessであり, は熱ノイズの強度である.ここでは, は にのみ依存し,速度の方程式に焦点を当てることができると想定されている.運動方程式の統合には,伊藤定式化とStratonovich定式化という一般的な2つの方法があるが,それらは次の方法で定義できる:
が定数のとき,2つの定式化は同一で,のときに同じ定常分布に至る:
が速度に依存する場合は,WienerProcessの性質のために,は非零の二次変動を持ち,2つの定式化は異なる結果をもたらす.Stratonovichの公式を伊藤の公式相当に変換する:
Stratonovichの定式化でのドリフトは伊藤の定式化でのドリフトとは異なる:
Gompertz曲線は,腫瘍の成長のような成長過程のモデリングによく使われる.成長過程の対数にガウスノイズを仮定すると,モデルを確率微分方程式として書くことができる:
時点 における過程のスライス分布はLogNormalDistributionに従う:
伊藤過程表現 (3)
ItoProcessを使って標準的なWienerProcessを表す:
はマルチンゲールである.伊藤の補題を使って の導関数を計算する:
CoxIngersollRossProcessを作成し,ItoProcessでこれを表す:
,における局所化された初期条件,ディリクレ境界条件で方程式を数値的に解く:
Kolmogorov前進方程式の における解をプロットし,これを閉じた形の密度関数と比較する:
Animateで解のダイナミクスを可視化する:
GeometricBrownianMotionProcessをItoProcessで表す.ここで, は無リスク金利を, は変動性を表す:
古典的なブラック・ショールズ(Black–Scholes)方程式は,若干の単純化を加えてドリフトを0にすることで得られる:
この方程式はFeynman–Kacの公式から直接得ることもできる:
DSolveでブラック・ショールズ方程式を記号的に解く:
特性と関係 (2)
考えられる問題 (2)
ItoProcessはランダムな初期条件をサポートしないので,表現することができない:
駆動された過程の初期時間はItoProcessにマッチする必要がある:
テキスト
Wolfram Research (2012), ItoProcess, Wolfram言語関数, https://reference.wolfram.com/language/ref/ItoProcess.html (2016年に更新).
CMS
Wolfram Language. 2012. "ItoProcess." Wolfram Language & System Documentation Center. Wolfram Research. Last Modified 2016. https://reference.wolfram.com/language/ref/ItoProcess.html.
APA
Wolfram Language. (2012). ItoProcess. Wolfram Language & System Documentation Center. Retrieved from https://reference.wolfram.com/language/ref/ItoProcess.html