NoncentralFRatioDistribution

NoncentralFRatioDistribution[n,m,λ]

分子の自由度 n,分母の自由度 m で,分子の非心母数が λ である非心F分布を表す.

NoncentralFRatioDistribution[n,m,λ, η]

分子の非心母数が λ,分母の非心母数が η の二重非心F分布を表す.

詳細

  • 非心F分布は,非心カイ二乗()確率変数とカイ二乗()確率変数をそれぞれの自由度で割ったものの比の分布である.
  • 二重非心F分布は非心カイ分布に従うそれぞれの自由度で割られた2つの確率変数の比の分布である.
  • NoncentralFRatioDistributionでは,n および m は任意の正の実数,λ および η は任意の非負の実数でよい.
  • NoncentralFRatioDistributionでは,nmλη は無次元量でよい.
  • NoncentralFRatioDistributionは,MeanCDFRandomVariate等の関数で使うことができる.

予備知識

  • NoncentralFRatioDistribution[n,m,λ,η]は,区間上でサポートされ,比 の分布として定義された連続統計分布を表す.ただし,Y1NoncentralChiSquareDistribution[n,λ]Y2NoncentralChiSquareDistribution[m,η]は,自由度 n および m,非心母数 λ および η をそれぞれ持つ独立変数である.確率密度関数(PDF)は,nmλη の値によって,単峰性か潜在的特異値が領域の下限に近付く単調減少のどちらかになる.さらに,PDFの裾部は,PDFが の大きい値について指数的というよりもむしろ代数的に現象するという意味で「太い」(この動作は分布のSurvivalFunctionを分析することで数量的に厳密にできる).4引数の形のNoncentralFRatioDistribution[n,m,λ,η]が一般に二重非心F分布と呼ばれるのに対し,3引数の形のNoncentralFRatioDistribution[n,m,λ](これが一般に非心F分布と呼ばれるものである)はNoncentralFRatioDistribution[n,m,λ,λ]に等しく,非心FisherSnedeco分布あるいはSnedecorの非心F分布と呼ばれることがある.
  • 非心F分布は1930年代の終りにはじめて導出されたが,その特性は1940年代の終りのPatnaikの著作までほとんど研究されなかった.Patnaikによって名付けられた非心F分布は,いわゆる非標準的な条件下の分散検定の分析における特性の研究に使われてきており,それ自身が,コンピュータサイエンス,数値解析,近似理論等の分野における研究の触媒となっている.この分布の最もよく知られた応用の多くは統計学におけるもので,この分野で,(例えばホテリング 検定に基づく検定等で)中心F統計に基づく検定の力を計算するため等に使われている.非心F分布は,多重使用信頼推定による多変量較正問題の研究にも使われている.
  • RandomVariateを使って,非心F分布から,1つあるいは複数の機械精度あるいは任意精度(後者はWorkingPrecisionオプションを介す)の擬似乱数変量を得ることができる.Distributed[x,NoncentralFRatioDistribution[n,m,λ,η]](より簡略な表記では xNoncentralFRatioDistribution[n,m,λ,η])を使って,確率変数 x が非心F分布に従って分布していると宣言することができる.このような宣言は,ProbabilityNProbabilityExpectationNExpectation等の関数で使うことができる.
  • 確率密度関数および累積分布関数は,PDF[NoncentralFRatioDistribution[n,m,λ,η],x]およびCDF[NoncentralFRatioDistribution[n,m,λ,η],x]を使って得られることがある.平均,中央値,分散,原点の周りのモーメント,中心モーメントは,それぞれMeanMedianVarianceMomentCentralMomentを使って計算することができる.
  • DistributionFitTestを使って,与えられたデータ集合が非心F分布と一致するかどうかを検定することが,EstimatedDistributionを使って与えられたデータからパラメトリック非心F分布を推定することが,FindDistributionParametersを使ってデータを非心F分布にフィットすることができる.ProbabilityPlotを使って記号非心F分布のCDFに対する与えられたデータのCDFのプロットを生成することが,QuantilePlotを使って記号非心F分布の変位値に対する与えられたデータの変位値のプロットを生成することができる.
  • TransformedDistributionを使って変換された非心F分布を表すことが,CensoredDistributionを使って上限値と下限値の間で切り取られた値の分布を表すことが,TruncatedDistributionを使って上限値と下限値の間で切断された値の分布を表すことができる.CopulaDistributionを使って非心F分布を含む高次元分布を構築することが,ProductDistributionを使って非心F分布を含む独立成分分布の結合分布を計算することができる.
  • NoncentralFRatioDistributionは他の多くの分布と関連がある.これは,NoncentralFRatioDistribution[n,m,0,0]NoncentralFRatioDistribution[n,m,0]両方のPDFが厳密にFRatioDistribution[n,m]のPDFと等しいという意味で,FRatioDistributionを直接一般化したものである.NoncentralFRatioDistributionNoncentralChiSquareDistributionNoncentralBetaDistribution両方の変換(TransformedDistribution)として実現することができ,ChiDistributionChiSquareDistributionStudentTDistributionLaplaceDistributionFisherZDistributionとも密接な関係がある.

例題

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  (5)

確率密度関数:

二重非心F分布の確率密度関数:

累積分布関数:

二重非心F分布の累積密度関数:

平均と分散:

二重非心分布の平均と分散:

スコープ  (8)

非心F分布から擬似乱数のサンプルを生成する:

そのヒストグラムを確率密度関数と比較する:

分布母数推定:

サンプルデータから分布母数を推定する:

サンプルの密度ヒストグラムを推定分布の確率密度関数と比較する:

歪度は自由度 mn,および非心度 λ に依存する:

尖度は自由度 mn,および非心度 λ に依存する:

母数の関数としての閉形式の種々のモーメント:

Moment

記号次数の閉形式:

CentralMoment

FactorialMoment

Cumulant

ハザード関数:

二重非心F分布のハザード関数:

分位関数:

アプリケーション  (1)

NoncentralFRatioDistributionは線形モデルフィットの係数についての仮説検定のベキ関数の計算に現れる.次の21個のサンプル点が実験で測定された:

このデータの線形モデルを の形式で構築する:

特定の値を同時に持つ係数 についての仮説検定はFRatioDistributionに従うそれぞれ自由度が2と9の 統計を使って行われた:

および であるという帰無仮説で 統計の値を計算する:

5%有意水準の臨界値:

これにより,対立仮説は棄却できない:

真の値が実際には1.37と2.88であると仮定すると, 統計は非心母数 NoncentralFRatioDistributionに従うことになる:

真の値がであると仮定した場合の検定のベキ乗:

ベキ乗を非心母数の関数としてプロットする:

特性と関係  (6)

他の分布との関係:

非心F分布を簡約するとFRatioDistributionになる:

二重非心F分布を簡約するとFRatioDistributionになる:

二重非心F分布を簡約すると非心F分布になる:

2つのNoncentralChiSquareDistributionの比は非心F分布に従う:

NoncentralBetaDistributionNoncentralFRatioDistributionを変換したものである:

考えられる問題  (4)

NoncentralFRatioDistributionは,n あるいは m が正の実数でないときは定義されない:

NoncentralFRatioDistributionは,λ が非負の実数でないときは定義されない:

非心F分布の特性関数には,閉形式の表現はない:

記号出力に無効な母数値を代入すると意味のない結果が返される:

おもしろい例題  (1)

累積分布関数の等高線を持つ λ のさまざまな値についての確率密度関数:

Wolfram Research (2007), NoncentralFRatioDistribution, Wolfram言語関数, https://reference.wolfram.com/language/ref/NoncentralFRatioDistribution.html (2016年に更新).

テキスト

Wolfram Research (2007), NoncentralFRatioDistribution, Wolfram言語関数, https://reference.wolfram.com/language/ref/NoncentralFRatioDistribution.html (2016年に更新).

CMS

Wolfram Language. 2007. "NoncentralFRatioDistribution." Wolfram Language & System Documentation Center. Wolfram Research. Last Modified 2016. https://reference.wolfram.com/language/ref/NoncentralFRatioDistribution.html.

APA

Wolfram Language. (2007). NoncentralFRatioDistribution. Wolfram Language & System Documentation Center. Retrieved from https://reference.wolfram.com/language/ref/NoncentralFRatioDistribution.html

BibTeX

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